会長ごあいさつ

ロイヤルグループだからこそ
提供し得る価値を大切にしながら、
あらゆるステークホルダーの皆様のご期待に、
これからもお応えしていきます

「現場力」が十分に発揮できる環境を創っていくことこそが私の仕事

私が経営の考え方として一番大切に思っていることは、ゴーイング・コンサーン(Going Concern)です。私は過去に銀行・証券という金融の世界に身を置いていた際、銀行が破綻し、会社が倒産していく姿を経営の中枢の近くで見てきました。その経験から、企業は継続していくことが最も大切なことだと思うようになりました。

その大切さを改めて感じさせられたのが、新型コロナウイルス感染症の拡大です。たった1年で約6割の自己資本を失う状況の中で、とにかく早く手を打つことが必要でした。状況の変化に対して、手を打つのが遅くなることが一番のリスクです。当社は2021年3月に双日(株)と資本業務提携契約を締結し、多くの領域でサポートをしていただきながら、事業を遂行してきました。

我々が主に展開している事業は、現場で価値創造が行われています。来ていただいたお客様に満足していただき、リピートしていただく、その繰り返しによって企業価値が創造されていきます。当社グループの強みは、その「現場力」にあると思っています。おいしい料理とホスピタリティ溢れる「現場力」が十分に発揮できる環境を創っていく、それが仕事においてずっと大切にしてきた私の考えです。

すべてのステークホルダーに選ばれる会社に

ゴーイング・コンサーンを実現するために、もうひとつ重要なことは、すべてのステークホルダーに選ばれる会社になることです。

資本主義には、会社が成長することですべてのステークホルダーの満足度が上がるというシステムがビルトインされています。お客様がたくさん来てくれるお店が増えれば、お客様の満足度は上がり、従業員の給料も増え、取引先も取引量が増えます。株価も上がって株主の満足度も上がります。しかし、会社の成長が止まると、すべてのステークホルダーの満足度は低下していきます。お客様の満足度は下がり、従業員の給料が増えない、取引先からの仕入れ量が減り、そして株価も下がっていきます。さらに時としてステークホルダーの利害対立につながります。この利害対立は従業員と取引先にしわ寄せがいくケースがあります。それは顧客と株主が選ぶ立場であり、従業員と取引先は選ばれる立場であったからと私は考えます。この状況が今大きく変わろうとしています。

今起きているパラダイムシフトは「供給制約」です。この供給制約は従業員と取引先を選ばれる立場から選ぶ立場に変化させます。つまりすべてのステークホルダーに選ばれる会社にならないと生き残っていけないのです。ここが今後の経営の大きな方向性だと思っています。

「守り」から「攻め」の姿勢をさらに強くしていく

2020年度~2021年度と2期連続で大きな赤字を計上したので、現中期経営計画では、まず2022年度は黒字化を達成し、そして2023年度は新型コロナウイルス感染症拡大以前の2019年度の業績水準まで何とか戻したいと考えていました。結果2023年度の業績は、様々な施策と従業員一人ひとりの頑張りが実り、2019年度を凌駕するものとなりました。一方でこれはインバウンド需要やリベンジ消費などの外的要因がとても大きいとも思っています。この外的要因に持続性があるのかは決して楽観視できるものではないので、気を抜いてはいけないというのが2023年度の結果に対する評価です。

現中期経営計画策定時と、最終年度を迎えた現在とでは、事業環境は大きく変化しました。デフレからインフレになりつつあり、金利も上がり始めています。また、世界の地政学リスクや、米国・中国との関係の中で、日本の重要性が高まるなど、状況が大きく変わっています。ということは、私たちも変わらなければなりません。どのように変わるかというと、「守り」から「攻め」の姿勢をさらに強くしていくことです。国内でも海外でも「攻め」に転じることこそが次期中期経営計画の重要な要素になると思います。

当社グループは、コロナ禍以前より事業の多角化を進めてきました。しかし、それまでうまく機能していたポートフォリオも、コロナ禍のような社会全体を揺るがす大きな波には対応ができず、その結果、あらゆる事業が大きな影響を受けました。このような事態の再発を防ぐために、ポートフォリオを元に戻すだけではなく、「ポートフォリオ自身の進化」「ポートフォリオの構成事業の進化」「ポートフォリオの有機的一体化」という3つの視点に基づき、ポートフォリオ経営の進化を推進してきました。

例えば、円安が進むと、外食事業は原材料の高騰などで大きな打撃を受けますが、ホテルや空港はインバウンド需要が増えます。外部環境の変化に対して、多様な事業があることで、それらを組み合わせて対応できるのは、当社グループの強みだと思います。一方、コロナ禍ですべての事業がサスペンドされた状態というのは常に頭に入れながら、次の事業戦略をいかに組み立てていくかが私たちに問われている課題だと思っています。

「変わらざるもの」と「変えていくもの」

将来の当社グループを考えたときに、変わらず大切にしていくものは、やはり「ロイヤル経営基本理念」の実践で、これは変えてはいけないことです。一方、変えていくべきことは、働く人の多様性です。

先述のように、まずすべてのステークホルダーに選ばれる会社になるというのが大前提です。その中でも働く人に選ばれる会社にならなければ、存続はありません。その上で、多様な人たちが、働く場所として当社グループを選んでくれるように考え方を変えていかなければなりません。多様な人が働くことによって多様なお客様の満足度を上げていけるビジネスモデルを創っていくことが求められています。

今までは、ロイヤルホストではこういう方たちに働いていただきたいと私たちが規定していたのですが、これからはそうではなく、多様な人たちがより働きやすい会社にならなければなりません。今までは会社に合わせて人を選んでいましたが、これからは、働く人を中心に考え、それに沿った環境を創っていくことこそが、我々が変えていくべきことです。

「供給制約」が起きている今、私たち自身が多様な価値を認めていく会社に変わらなければ生き残れないのです。当社グループは、事業が多様なので、このポートフォリオを利用していけば、実現しやすいのではないかと思います。今までのポートフォリオはどちらかというとお客様視点でした。今後は、多様なお客様という視点だけでなく、多様な人が働くという視点でポートフォリオを構築していくことが求められますし、これが結果としてお客様の満足、企業価値の向上につながり、あらゆるステークホルダーの期待に応えることにつながると考えています。

ロイヤルグループのサステナビリティ経営

当社グループは、「ロイヤル経営基本理念」を礎に「地域・社会に根付いた企業となり、すべてのステークホルダーから共感・支持を得られる企業」を目指すサステナビリティ経営を推進しています。

食に関わる企業は、社会に対する責任がとても大きいと思います。SDGsの項目を見ても、食に関することが多く含まれています。望むと望まざるとに関わらず、食は環境破壊など、様々な意味で社会環境に対してネガティブな要素を持っていました。それを変えていくのも食に関わる企業の責任ですし、それをやること自体が、社会から選ばれる会社になるために必要不可欠なことなのです。

環境や社会にネガティブなインパクトを与え続けている会社では働きたくないですし、そんな会社には投資もしたくないでしょう。だから食に携わる企業として、そこに対して責任を持ち、社会的責任を果たすだけではなく、事業を通じて社会課題の解決に貢献していくことが、会社が生き残るために必要なプロセスで、これもまたゴーイング・コンサーンに結びつく取り組みなのです。

また、以前は企業が自社の方針を「ビジョン」として語っていましたが、現在では「パーパス」という形で方針を示すように変化しています。ビジョンは未来です。例えば10年後に1兆円企業を目指しますなど、不確実な将来を見えるようにすることです。一方パーパスは、現在の存在意義と考えています。この変化の背景には、規模の成長のみを志向する方向性に対する反省があるのではないかと感じています。本来有限性を前提とする資本主義が無限性を前提にし始めたことから、果てしない増殖活動が進められてきました。しかし、企業が環境問題、食料問題などの様々な社会課題に直面し、改めてその有限性に危機感を感じ、自社の存在意義を自問自答することが、パーパスという言葉の一般化につながっているのだと思います。この流れもまた、ゴーイング・コンサーンの考え方とつながっていると思います。

変えてはいけない本質を守るためには、変わっていかなければならない

当社は、元来単一性の風土があり、これは創業から培われてきた良さでもありました。それに対して、事業も多様化し、今後働く人も多様化が進むでしょう。外部からも人が入ることも良いと思いますし、色々な人が混じり合うことで柔軟性が生まれ、柔軟性があることが当社グループの守ってきたことをさらに強くする最大の武器になるのです。

コロナ禍のときに従業員に対して何度もオンラインで状況説明を行いましたが、その中で最も強調したのは、「不易流行」という言葉です。松尾芭蕉の言葉ですが、流行は流行り廃りで、不易は変えてはいけない本質なのです。これは何を意味しているかというと、変えてはいけない本質を守るためにも、新しく変化を重ねているものを取り入れていくこと、また、変化を重ねていく流行性こそが不易の本質であるということで、当社グループに当てはまる言葉です。今後の当社グループがより成長していくためには、変わることこそが大事なものを守っていくための重要な行動なのです。

代表取締役会長 菊地 唯夫

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