社長ごあいさつ

常に上質な時間と空間を提供し、
グローバルで成長する、
“食”&“ホスピタリティ”グループを目指していきます

外部環境が急速に改善した2023年度

2023年度は、社会や経済が新型コロナウイルス感染症との共生を模索する一方、警戒感や不安な声も残る一年でした。しかしながら、感染症法上の分類が5類に移行したことで、行動制限が緩和され社会経済活動は正常化に向かいました。また、雇用や所得環境の改善に伴う個人消費の持ち直しや、インバウンド需要の拡大などが国内景気を下支えしました。当社グループにおいても、その外部環境の改善をしっかりと捉えた対応を行ったことにより、2023年度は、売上高138,940百万円(前期比+33.6%)、営業利益は6,074百万円(前期比+177.1%)と新型コロナウイルス感染症拡大以前の水準まで業績を回復することができました。

他方、中東情勢の悪化やウクライナ侵攻の長期化による地政学リスクに加え、気候変動の影響により、為替相場や食材および資源価格の変動など、国内経済は依然として不透明な状況が続いています。需要回復の動きが見られたものの、外食産業を取り巻く環境は、原材料費や物流費の高止まり、需要が回復していく中でのさらなる労働力不足など、依然として厳しい状況です。当社グループにおいても、人手不足から現場への負荷が続いており、その影響と既存事業の急激な回復により、新規出店にも遅れが出ています。また、新型コロナウイルス感染症などの影響により抑制してきた設備投資や改装工事についても、資材の高騰などによりやや課題が残る結果となりました。

中期経営計画の進捗~各カテゴリー施策効果の確かな実感~

当社グループは、コロナ禍に浮かび上がった「人流依存のポートフォリオ」「固定費負担の増大」「各事業のレジリエンス不足」などの課題を踏まえ、2022年2月に「再生・変革」から「成長」を目指す中期経営計画2022~2024をスタートしました。時間や場所にとらわれない“食”&“ホスピタリティ”の提供をビジョンとし、事業ポートフォリオを5つのカテゴリーに分けて、「既存事業の収益性向上」と「戦略的事業の創造」を重点課題として各事業セグメントにおける施策を推進しています。

カテゴリー1では、「既存事業の収益性向上」として、お客様が待ち望んでいた外食や旅行需要にしっかりとお応えするべく、付加価値の高いメニュー提供や店舗・厨房設備の改装など、高付加価値戦略を継続し、外食の価値や楽しさを改めてお客様に訴求することができました。

カテゴリー2では、天丼てんやにおいて、まずは関西ドミナント出店を開始し、直営店として関西地区の3店舗をデジタル・テクノロジーの活用によるオペレーションの効率化を実現した次世代型店舗(NEWてんや)として出店しました。また、双日(株)との合弁カフェ事業「COSTA COFFEE」のチェーン展開を開始し、2024年3月現在、7店舗を運営しています。

カテゴリー3では、食品事業の商品開発力・SCMの強化として、日本のおいしい食材を生産者とチームになって紹介する「Good JAPAN」企画を3年ぶりに復活しました。この企画は、企画開発部門と購買部門が一体となり、日本各地の生産者を訪ねて出会った食材を、ロイヤルホストの商品開発力と調理人の力で新しい料理として提供するものです。今回はこの企画を当社グループ全体に展開し、おいしい日本の食材を使用したメニューを各ブランドで提供しました。

カテゴリー4では、リパッケージ戦略として、コロナ禍後においても、レストランクオリティのフローズンミール「ロイヤルデリ」を注力する事業の一つとして考え、「三井のリパーク」やリッチモンドホテルへの冷凍自販機の設置や、百貨店内での販売、空港・高速道路内カフェでのイートイン販売など、さらなるブランド力向上と販路拡大を進めています。

カテゴリー5では、海外FC事業の拡大・海外直営事業基盤の確立として、双日(株)との協業で、2024年7月にシンガポールのチャンギ国際空港隣接の大型商業施設内にロイヤルホストの海外直営1号店を出店します。

また、サステナビリティに配慮したおいしい植物肉製品を提供すべく、2022年に当社、双日(株)およびユニテックフーズ(株)と植物肉事業に関する戦略的業務提携契約を締結し、3社共創により動物性原料不使用の大豆ミート「NIKUVEGE(ニクベジ)」を活用した商品の開発・販売を進めています。ロイヤルホストだけではなく、グループ各店舗での販売を拡大しており、2023年は244店舗にて競争力のある価格・品質で提供しています。

「人的資本投資」は一過性ではなく、継続的な投資による成長循環を創り出す

一方で残されている課題としては、やはり労働力の確保です。この課題に対して、当社グループでは、2023年に宣言した「人的資本投資にかかわる基本方針」に基づき、継続的なベースアップやシニア社員を含む店長・料理長の処遇改善等、教育研修機会の充実を図るとともに、ロイヤルホストの店舗休業日の増加や営業時間の見直し、健康経営の推進による労務環境の改善を進めています。また、現場の人手不足に対しては、キャリア採用やアルムナイ採用などの積極的な採用活動を行っています。さらに、D&Iを推進するための環境整備を行い、多様な人材が活躍できるグループを目指しています。

2023年度は、積極的な賃金改善および教育研修の実施により、課題であった従業員満足度調査における給与水準・教育研修に関する項目が改善されました。「人的資本投資」は、コロナ禍後の一過性の対応ではなく、継続的な従業員への投資を行うことで、安定的な人員確保と成長循環を創り出すものとして、今後も強化していきます。

DXの活用により、持続的に成長できる新しいポートフォリオ経営を実現

デジタル・テクノロジーをフル活用することで、変化に対応し、持続的に成長できる新しいポートフォリオ経営を構築するため、様々な取り組みを進めています。出島プロジェクトにおいては、DX店舗として「TEN Labo」を2023年4月に東京・錦糸町にオープンするなど、引き続きAI調理支援システムの開発などを進めています。SCMにおいては、統合マスタ(POS・材料展開)を用いた自動発注の実証実験を開始し、2023年度は10店舗導入し、2024年度はロイヤルホスト、てんやにおいて全店導入を目指しています。ネットワークインフラについては、システム全体像可視化プロジェクトを開始し、また新店舗管理システム(Polaris)による業務効率化を目指したシステム開発など、中期経営計画で掲げた投資は予定通りに進んでいます。

2024年6月には、顧客IDの統一によるCRM構築を目指し、当社グループ共通アプリ「MyROYAL」がスタートしました。お客様との接点がより拡充され相互理解が進むことにより、これまでにも増してお客様によりお楽しみいただける企画を導入していくことで、当社グループへのさらなるロイヤリティ向上・ファン化の促進を進めていきます。

イノベーション戦略は、お客様と従業員の両方に焦点を当て、お客様には従来のサービスに加え、新たに進化した満足や楽しみ、利便性を体験していただき、従業員に対しては、業務プロセスの可視化や効率化、勤務体系の柔軟性を高め、ワークライフバランスの改善、個々の達成感や成長を促進する仕組みを構築していきます。

5つのマテリアリティを着実に実行するサステナビリティ経営

当社グループは、「ロイヤル経営基本理念」を礎に、「地域・社会に根付いた企業となり、すべてのステークホルダーから共感・支持を得られる企業」を目指すサステナビリティ経営を推進しています。 このサステナビリティ経営をさらに進化させるために、①人財、②“食”&“ホスピタリティ”、③資源・ 環境、④地域、⑤ガバナンスという5つのマテリアリティを2023年に策定し、様々な取り組みを行っています。

2023年度は、環境への取り組みとして、当社を含む6事業者1自治体(東京都杉並区)で推進している食品ロス削減の取り組み「自治体・事業者連携によるmottECO導入、普及推進事業(以下、「mottECO事業」)が、環境省、消費者庁が主催する「令和5年度食品ロス削減推進表彰」において環境大臣賞を受賞しました。
「mottECO事業」は、7 団体で構成する「mottECO普及コンソーシアム」が推進している食品ロス削減アクションです。外食時、お客様が料理を食べきれない場合に専用容器をお渡しし、ご自身の責任においてお持ち帰りいただくことで「食べ残したものは自分の責任で持って帰る文化」の普及と啓発を図るものです。

また、工場においては、Mottainai(もったいない)プロジェクトとして、工場内で発生する端材の製品化、膠着食材や訳あり商品をフードトラックや地域のイベントにて販売、また地域のフードバンクを通じてこども食堂などへ寄贈するなど、食品廃棄物削減に対する取り組みを進めています。これらの取り組みの結果、2023年度は、2016年度比12.9%の食品ロスの削減を実現し、2024年度の目標値(食品ロス2016年度比10%削減)を達成しています。

当社グループは、これらのマテリアリティの取り組みを着実に実行していくことにより、持続可能な成長を目指していきます。

ステークホルダーの皆様へ

当社グループは質の高い“食”&“ホスピタリティ”の提供、事業を通じた社会課題の解決により、お客様、従業員、株主様、お取引先様、そして地域・社会といったすべてのステークホルダーから信頼され、必要とされる企業を目指しています。当社グループは、それぞれの地域になくてはならない存在となり上質なサービスを提供し、すべてのお客様にとって安心してご利用いただける“食”&“ホスピタリティ”企業であり続けたいと思っています。また、既存事業への積極投資と、事業創造領域の育成という両輪で経営を行い、成長の糧も国内に留めず、海外での直営事業も加速し、世界各国で質の高い“食”&“ホスピタリティ”を提供し、それぞれの地域に貢献し続ける企業を目指していきます。

代表取締役社長 阿部 正孝

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中期経営計画2022~2024
~「再生・変革」から「成長へ」~