ロイヤルグループの企業価値向上に向けたガバナンスの在り方

社外取締役(監査等委員)3名と会長による座談会の集合写真

当社の社外取締役(監査等委員)3名と菊地会長による座談会を実施し、
企業価値向上に向けたロイヤルグループのガバナンスの在り方について語りました。

座談会参加メンバー

  • 社外取締役(監査等委員)中山 ひとみ
  • 社外取締役(監査等委員)梅澤 真由美
  • 社外取締役(監査等委員)坂本 光一郎
  • 取締役会長菊地 唯夫

ガバナンスの現状評価と課題
~事業の多角化に伴い求められる、「攻めのガバナンス」~

菊地

中山取締役は当社の社外役員として最も長いご経験をお持ちですが、当社のガバナンスについて、これまでの変化や現時点の評価、課題認識についてお聞かせください。

中山

就任してから6年が経ちますが、ガバナンスはかなり改善されてきたと感じています。ただ、従業員の皆さんは真面目で一生懸命である一方で、前例踏襲の傾向が強く、もう少し新しい領域への挑戦心や「今後この会社に必要なことは何か」という発想が強まると良いのではないかと感じています。既存の枠から一歩踏み出す攻めの姿勢を支えるためにも、内部統制や内部監査の在り方を突き詰めて考えることが必要だと思います。あえて既存の枠から外れていく、そんな姿勢が強まれば、さらに大きな飛躍につながるのではないでしょうか。

梅澤

私も同感です。監査等委員会設置会社への移行は10年前だったと思いますが、経営と執行の分離が進んできたのは喜ばしいことです。4年前の私の就任当時は会議のアジェンダにやや冗長感がありましたが、会議体が整理され、執行役員が戦略会議で議論し業務を執行する体制整備がなされてきました。しかし、社会が急速に変化している今、ロイヤルグループとしては双日㈱との海外展開をはじめ、事業の多角化が進むなど、体制面に加え、事業のスピードをさらに高めるための取り組みを考えていく必要があると思います。

坂本

現状のロイヤルグループのガバナンスは教科書的に見ると非常に評価できる状態かと思います。ただ、経営のスピード感を上げるためには、より積極的に事業に取り組む執行のエネルギーが必要です。経営が方向性を決めたときに、執行からも自発的な提案が自然に上がるような状態にするためには、経営と執行の議論の場において、社外役員がどういう観点で意見するべきなのかを常に意識しています。

菊地

そうした枠から外れるようなエネルギーを引き出すためには、執行メンバーがより外部とのつながりを作っていく必要があると思います。現状では、社内の視点が強く、社外のスタンダードをベースとした指摘をされると「それに従わなくては」となりがちです。執行側が直接外部のスタンダードを知ることで、自発的かつ双方向での議論が活性化されると考えます。

梅澤

その点、社内外に接点を持つ社外役員は、社内にとどまっている執行メンバーが、外部との接点を作るための触媒となる役割を担うことができると考えています。

坂本

外部とのネットワーク構築に加えて、既存の枠組みを破ってでも「こんな新しいことをやりたい」という挑戦を評価、後押しする企業風土の醸成も攻めのガバナンスとして意識しなくてはいけません。経営ビジョンで掲げる「変わらざるロイヤル、変わりゆくロイヤル」を起点に、「変わりゆく」とはどういうことか、現場の従業員が自分事として捉え、新たなチャレンジに取り組んでいくことを期待しています。

中山

チャレンジを後押しする風土の醸成という点では、ROYAL AWARDなどで従業員のチャレンジを推進、表彰する制度ができたことを評価しています。今後も、一人で考えるのではなく、皆で考えてチャレンジができる機会を意識的に創出できると良いと思います。

菊地

これまでの数年間は、取締役会の実効性評価と改善に継続的に取り組み、経営と執行の分離を進め、教科書的に良しとされる「ガバナンス1.0」の段階まで進化したように思います。一方で、会社がよりスピード感を持って前に進むためには、双方向での議論の充実に向け、執行メンバーの外部へのネットワーク構築や、新たなチャレンジを促す仕掛けを作ることで、「攻めのガバナンス」が効いた「ガバナンス2.0」へと進化させていきたいと思います。

ホスピタリティ産業・分散拠点型ビジネスのあるべきガバナンス~現場における価値提供を支える、余力を作る経営~

菊地

当社グループはホスピタリティ産業として、分散拠点型ビジネスという特性があります。この特性を踏まえて、あるべきガバナンスを考えていく必要があると思っています。

坂本

ホスピタリティを産業化するには、現場の努力だけでなく、セントラルキッチンのような現場を支える仕組みを今後も経営が生み出し、進めていくための体制構築が必要だと考えています。

中山

ホスピタリティは現場で発揮されるものである以上、それができていないと現場に問題があると安易に判断しがちです。現場力の基盤となる労働力が減少する中、この避けられない構造変化に対して、現場がよりホスピタリティを発揮できるように、経営が仕組みを整えていかなければなりません。

菊地

お客様に良いサービスを提供するには、「喜んでいただきたい」という意欲が必要です。当社グループにはその強みがありますが、現場力を最大化するには、この意欲に加え、現場に余力を持たせることが重要であり、そのアイディアを出し、自律的に回転させていくことが経営の役割と言えます。
R-セッション(※)で従業員に伝えている話を例に挙げると、企業が提供する価値には、Value(バリュー)とWorth(ワース)があります。Valueは価格やコストパフォーマンスなど、他社と比較できる合理的な価値ですが、Worthは「この会社のサービスだから利用したい」という非合理的とも言える価値であり、これこそが模倣困難性の高い差異化要因を生み出します。
東洋的なWorthの価値観では、目に見えない「気配」を感じる精神が重視されます。気配は訓読みすれば「気配り」=ホスピタリティであり、それを感じるには余力がある状態が必要です。だから、現場がお客様の気配を察知できるよう、経営は余力を生み出さなければなりません。

※従業員参加型の決算説明・交流会。毎年年間のべ約2,000名が参加

中山

Worthを体現する人的資本投資が重要です。先日、横浜のロイヤルアカデミーに行きましたが、そこでは一流の料理人がさらに上を目指す教育研修が実施されていました。まさにWorthを提供する人材育成であり、それだけ教育に時間と手間をかけることは容易ではありません。この教育が各階層で実施され、事業の成長につながるところまで継続していただきたいです。

縦軸と横軸のバランスが取れたグループガバナンス

梅澤

分散拠点型ビジネスにおいて、Worthを体現する現場力が事業ドライバーとなることは間違いありません。他方で、今後多角化が進む中で、どのようにグループガバナンスを効かせていくかを考える必要があります。経営としては、中期経営計画のようなグループ全体で進むべき方向性をグループの横軸で定め、縦軸の事業は執行に任せることでスピード感のさらなる向上が見込まれます。各事業がそれぞれの事業特性や実態を踏まえたスピーディーな判断が下せるよう、権限委譲や組織設計、運用ができると良いのではないでしょうか。

菊地

実は、当社が2005年に持株会社化したとき、各所で個別最適が優先されてグループ全体の利益が後回しになってしまい、その後2期連続赤字に陥った過去があります。しかし、ここ3、4年で事業間の人事異動が促進されることでグループ間の連携が進み、グループ全体に横串が刺さりやすくなりました。これは今後のグループガバナンスを構築していくうえでうまく機能していく状態ではないかと感じています。

中山

グループガバナンスの強化に向けては、各事業会社の取締役会や監査役の役割をどのように位置付けていくかを議論してもよいかもしれません。事業会社の監査役同士の連携は非常に重要であり、グループの監査役が定期的に議論する場を設けることができれば、そこに集約される情報はガバナンス強化の貴重な材料になるのではないでしょうか。

坂本

ロイヤルグループにおける現状の縦軸・横軸のバランスは、おおむね良好な状態にあると認識しています。各事業会社の独自性や権限の確立という点においてはまだ発展の余地がありますが、各事業会社がそれぞれ自律的かつスピーディーに機能している状態のグループガバナンスが、目指すべき「ガバナンス3.0」ではないでしょうか。

部分非合理が企業価値向上につながるストーリー提示の重要性

坂本

経営の教科書的に言えば、事業の多角化が進む中では、社外取締役の立場としては資本効率を最適化するための議論を重視する傾向にあります。そのため、ロイヤルグループの場合はホスピタリティを産業化して収益性を高め、資本効率の観点でも非の打ち所がない事業に育てていくストーリーをステークホルダーに伝える必要があり、これは非常にチャレンジングなことだと感じています。

菊地

以前、経営学者の楠木建さん(※)と対談させていただいた際に「部分合理性と全体合理性」という考えを教えていただきました。
部分的にも全体的にも合理的な経営は、他社にも模倣できてしまいます。最も経営として強い状態は、部分非合理で全体合理、つまり「部分的には非合理的な領域を有しているが、その領域があることで、他社には模倣できないグループ全体の価値が成立している」という状態です。
当社グループに当てはめると、“ホスピタリティ”がまさにそういうものかもしれません。そして、私にも経験がありますが、社外の視点ではそうした部分非合理の重要性に気付き難く、合理性で経営を判断しがちです。だからこそ、そういった部分非合理が全体合理につながるストーリーを社内の人員がロジカルに組み立て、社外に説明していくことがとても重要なのです。

※一橋大学ビジネススクール特任教授。『ストーリーとしての競争戦略:優れた戦略の条件』著者

梅澤

社外取締役の立場としては、株主の皆様に企業の部分非合理が全体合理、すなわち企業価値につながるストーリーを説明するための機会を増やす必要があると考えています。
さらに言えば、ロイヤルグループが重視するサステナビリティについても、非財務的な取り組みが巡り巡って財務的価値、ひいては企業価値向上につながるストーリーの中に位置付けられていることを発信するのが良いのではないでしょうか。

菊地

能登半島の震災復興で家屋の泥出し支援に参加したときにも、「石川県に1店舗も出店していないのに企業として参加する理由付けはどうするのか」という点は議論になりました。結果としては、その活動に参画したいと手を挙げた約50名だけではなく、そのような取り組みを行う企業としての姿勢が従業員の共感を生み出しエンゲージメントが向上したと認識しています。かつて処理水海洋放出に伴い日本からの水産物の輸出が減少した際に、国産水産物を応援すべく「Good JAPAN」企画を復活させた事例と共に、まさに、社会価値が経済価値に結び付いた事例であったと考えています。こうしたストーリーをお伝えする場を増やさなくてはなりません。

中山

こども食堂も同様の取り組みであると考えています。ぜひ、企業価値を高める取り組みとして続けていただくと同時に、非合理的と見なされがちな非財務価値こそ企業価値につながるストーリーの中に位置付けて、発信するべきだと思います。

坂本

こうしたストーリーを組み立てることで、サステナビリティの取り組みが、どのように収益性につながっていくかという議論が深まると良いですね。
「グループ全体でさらに収益性を高めていこう」という意識が強まると、よりホスピタリティが事業とつながり、社会価値と経済価値の創造がサイクルとして回っていくのかもしれません。

菊地

この部分非合理と全体合理のストーリーは、前述のValueとWorthの話につながっており、部分非合理とも捉えられるようなものこそWorthであり、当社グループにおけるホスピタリティなのではないかと考えています。
このような「社会価値と経済価値が企業価値向上につながるストーリーの構築」にも社外の知見が重要であり、最初にお話しした社外との接点を持つことにもつながると思います。
私たちはホスピタリティの産業化という難しいテーマに挑んでいます。このホスピタリティをいかに事業モデルに組み込み、働く人の未来につなげていくか、それが私たちに課された究極の使命なのです。

ステークホルダーに向けたメッセージ

坂本

ステークホルダーに向けてということで、株主の皆様だけではなく、従業員やお客様に当社の価値観を訴求することが必要であると思っています。簡単ではありませんが、難題への挑戦の先にこそやりがいがあると感じています。そのことを従業員の皆さんにも感じていただくために、チャレンジ文化の醸成や社外との交流を促進し、トライアンドエラーを通じて前に進んでいくことが、結果的に株主を含めたステークホルダー全体のためになると考えています。

梅澤

加えて、株主の皆様に向けてお伝えしたいこととして、2つの視点を持っています。1つは、ロイヤルグループの事業ポートフォリオについてさらに議論を深め、中長期でどのように成長していくのかをきちんと語ることで株主の皆様に安心していただけるよう、上場会社としての説明責任を果たしていくことが必要だと考えています。
もう1つは、今後の事業拡大に向けて様々な企業との協業関係が広がる中、少数株主保護の観点から利益相反への懸念などを、引き続きモニタリングすることが独立社外取締役の役割だと認識しています。

中山

ステークホルダーの皆様のニーズは立ち位置によって異なります。投資家は資本効率や中期目標に関心があるでしょうし、お客様は品質や安全性とブランドへの期待、従業員は働きがいや処遇、心理的安全性、取引先は安定的かつ公正な取引を望み、社会や行政は地域貢献や人権を求めるでしょう。
それぞれのニーズに正しく向き合い、開示の質を上げることが対話の質を上げ、ひいては皆様からの信頼を得ることにつながると思います。
私は2020年の就任から当社を見てきましたが、2025年度はコロナ禍を乗り越えて、最高益を達成しました。皆様の努力と協力に頭が下がる想いです。不確実性の高い環境で、今後も多くの難題にぶつかることはあるでしょうが、自信を持って次なる難題に立ち向かっていきたいと考えています。

菊地

これまでのデフレが続く経営環境において、我々を含む多くの企業において、あらゆるステークホルダーの期待に応えられない時代が続き、どうしてもそのしわ寄せが従業員と取引先に及ぶケースがあったと思います。それは、ステークホルダーの中で従業員と取引先が「選ばれる立場」にあったからだと考えます。しかし供給制約が本格化する中、従業員と取引先も企業を選ぶ側の立場になる構図となりつつあります。つまり、企業はすべてのステークホルダーに一層フェアに対応する必要があり、それが結果として株主の利益につながるはずです。
これからのガバナンスにおいては、すべてのステークホルダーの満足度を高めるために、それぞれの自社のポートフォリオがどのように役割を果たしているか、責任をもって説明することが重要です。引き続き、社外取締役の皆様のお力を借りながら、「ガバナンス3.0」を目指していきたいと思います。

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